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ガンというもの(Ⅹ)

 ガンには様々な治療方法がありますよね。罹患したガンによっても方法によって治療効率は異なります。「このガンには抗ガン剤が有効だけど、あのガンには使いにくい。そのガンには放射線が有効だ!」とか。

 では、なぜ治療方法がいくつかあり、それぞれ治療効果が異なってくるのでしょうか?このシリーズをお読み頂いた方は分かるかと思いますが、それぞれのガンで特徴があるからです。

 ガンに対する治療が現在行われていますね。その中からいくつか、それぞれの特徴を挙げてみます。

●外科治療
 大きくなってしまった病巣を外科的に除去する治療方法ですね。つまり、ガンになってしまった部分を手術して切り取るということです。

 病巣を直接取り除いてしまうわけですので、転移がなくすべて取り除くことができれば一番確実に処置できる方法でしょう。ただ、表面に近い部分や手術しやすい部分のガンには良いですが、あまりに病巣が大きいと大幅に除去することになるので、体型が変わってしまうこともあります。顔や女性の胸、生殖器などの手術は外見やコンプレックス、ホルモンバランス、子供(妊娠)などの問題も抱えることになるので、一概に良い方法とは言えません。

●抗ガン剤治療(化学療法)
 ガン細胞の増殖を抑えて、ガン現状より進行しないようにすることを目的としている治療方法ですね。もちろんピンポイントで狙い打って小さくしていくこともできますが、一般的には血液循環で全身に薬を運びます。注射薬が多いですが、経口薬もあります。

 副作用が出やすいのが、抗ガン剤です。それは、正常な細胞とガン細胞は似ているため、正常な細胞にも攻撃を仕掛けてしまうからです。正常な細胞にダメージを与えられれば、当然、起きては欲しくない作用が現れてきてしまいます。それが副作用です。

 また、ガンの縮小に効果があるとはいえ、薬によっては生存余命には影響しないという報告もあります。個人的には、副作用で苦しめられるのであれば、選択したくはありません。ただ、安心感を得られる、転移が抑えられるということは大きなメリットでもありますね。

 抗ガン剤にもいくつか種類があります。
・アルキル化剤
 細胞の増殖には遺伝情報であるDNAが関わっています。そのDNAと結合して構造を変化(アルキル化)させることによって、ガン細胞の分裂や増殖をさせないようにします。
[塩酸ニムスチン(ニドラン)・シクロホスファミド(エンドキサン)・メルファラン(アルケラン)など]

・代謝拮抗剤
 ガン細胞の増殖に必要な物質とよく似た構造を体内に取り込ませ分裂に必要なDNAの合成をストップさせることにより、ガン細胞の分裂および増殖をさせないようにします。言葉は悪いですが、偽物をガン細胞に取り込ませて騙すというような感じの薬です。
[塩酸ゲムシタビン(ジェムザール)・テガフールウラシル(UFT)・フルオロウラシル(5-FU)など]

・抗ガン性抗生物質
 アルキル化剤と似ていますが、抗生物質です。ある種のカビから作られている物質を利用しています。DNAやRNAと結合するものを使い、ガン細胞のDNA合成をストップさせて分裂や増殖をさせないようにします。
[塩酸イダルビシン(イダマイシン)・塩酸ミトキサントロン(ノバントロン)・マイトマイシンC(マイトマイシンS)など]

・植物アルカロイド
 植物を原料として作られた天然由来の抗ガン剤で、細胞分裂をストップさせます。原理は種無しスイカと似たようなことです。ちょっと手を加えると、DNAは正常に分裂できなくなり、増殖できなくなることがあります。それを応用して、ガン細胞の増殖をさせないようにします。
[エトポシド(ペプシド・ラステット)・塩酸イリノテカン(カンプト)・ドセタキセル水和物(タキソテール)・パクリタキセル(タキソール)・硫酸ビンブラスチン(エクザール)など]

・ホルモン療法剤(内分泌療法)
 あるガンでは、『特定のホルモンが存在することでガン細胞が増殖しやすくなる』という関係性が判明しているものがいくつかあります。そのため、そのガン細胞ホルモンが届かないようにブロックすることで、ガン細胞を増殖させないようにする方法です。比較的激しい副作用が少なくQOLは高いようですが、ホルモンバランスが崩れるので注意が必要です。
[アナストロゾール(アリミデックス)・クエン酸タモキシフェン(ノルバデックス)・フルタミド(オダイン)・リン酸エストラムスチン(エストラサイト)など]

・その他(白金錯体・L-アスパラキナーゼ)
 アルキル化剤や抗ガン性抗生物質と同様にDNAと結合してガン細胞の増殖や分裂をさせないようにする白金錯体と増殖に必要なL-アスパラギンを分解してガン細胞の増殖や分裂をさせないようにするL-アスパラキナーゼです。
[L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)・カルボプラチン(パラプラチン)・シスプラチン(ランダ)・ネダプラチン(アクプラ)など]

●放射線治療
 放射線を細胞に照射して、細胞を機能停止させる治療方法です。ガン細胞は活発に分裂している状態です。そのような状態にある細胞は一般的に放射線に弱いと言われています。まあ、生まれたてで防衛力が乏しい状況とでも考えてください。そのような状況で放射線に晒されたガン細胞は傷つき、死滅してしまうことがあります。もちろん、ガン細胞にも増殖している時期、そうでない時期などの時間的要素や照射部分の酸素の状況などによっても治療できる・できないが異なるようです。

 細胞分裂がもともと活発な部位(脳細胞・腸粘膜・毛根など)への照射は副作用が起こりやすいと考えられるので適しませんが、身体の深部や複雑な部位に存在するガンや、外科的処置が好ましいにもかかわらず不可能な部位などのガンには、身体を切除する必要がない放射線治療にメリットがあります。

 放射線治療単独の場合もありますし、他の治療と組み合わせて行うこともよくあります。手術前に照射する場合、手術後に照射する場合、抗ガン剤(化学療法)である程度小さくしてから照射する場合などです。

 副作用としては、照射された部分はやけどのような状態になっているので、炎症がおきやすいことです。また、放射線を当てているので、その影響でガン化してしまう(放射線照射の影響を否定できない)こともあるようです。

●ガンワクチン治療(免疫療法・ペプチドワクチン療法)
 新しい手法(先端医療)です。治験を行っているところもありますが、今のところ保険外適用なのが難点。

 免疫機能に働きかけガン細胞を打ちのめす治療法です。体内に侵入してきた異物を排除するのが免疫システムで、この働きを利用してガン細胞を標的として認識させ、的確に攻撃させるためのサポートをする方法です。医薬品として製薬会社が量販する「ガンワクチン」、患者自身の細胞を利用して作成する「細胞免疫治療(療法)」などいくつか細かい分類があります。

 仕組みは、ガン細胞の表面に存在する目印となるタンパク質かけら(ペプチド)を人工的に合成し、それを注射して体内に送り込みます。そうすることで、血液中の白血球(免疫細胞)が『外敵が侵入してきた』と判断し、免疫応答が起こり、キラーT細胞と呼ばれる免疫細胞がガン細胞に直接攻撃を仕掛けます。

 人工的に作成した外敵情報を身体の司令塔に与え、自己免疫力を高めさせ、ガン細胞に対する認識力を高めて攻撃させるというものですね。要するに、ガン細胞に対する攻撃手を増やすということです。

●遺伝子治療
 遺伝子組み換え技術を用いて治療用遺伝子をガン細胞へ刺客として送り込み、死滅・血管新生抑制・異常タンパク質制御などを行わせる治療方法です。

 有名なものが「RT181」(ペプチドワクチン)を用いたもので、「p53遺伝子」を活性化させるものです。細胞はp53遺伝子が正常に機能していないと異常に増殖してガン化してしまいます。そのため、RT181を用いてガン細胞の遺伝子コピー機能を調節するように働きかけるわけです。

 他にも、「E10A」(血管新生阻害)を用いたものがあります。ガン細胞は分裂・増殖するための栄養を確保するために血管をあたらしく自分のところまで導いてこようとするわけですが、それをできにくくする(邪魔する・阻害する)わけですね。

 血管新生阻害ではVEGFやHGFを用いたものの方が安全性が高い様に思います。他にも『核酸医薬による遺伝子治療』というものがあるようで、mRNA(メッセンジャーRNA)を標的としているそうです。内訳として、アンチセンス・リボザイム・siRNA。作用機序は、標的遺伝子のmRNAに結合し翻訳を阻害したり、RNAの分解を促進することにより遺伝子の発現を制御したり、核酸を切断する酵素活性を有する1本鎖RNAでmRNAを切断することにより遺伝子発現を抑制したりする様です。RNAiという現象が有名ですが、それが関わっているようですね。

 ガン以外にも、心筋梗塞、心臓移植、関節リウマチ、骨粗鬆症など様々な病態に対して薬効を示しているとのことですので、益々の研究が期待されます。

長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。ひとまず、『ガンというもの』のシリーズを終了させていただきます。またお会いできる日を楽しみにしています。
  『ガンというもの(Ⅰ)』:日本人の死亡原因
  『ガンというもの(Ⅱ)』:腫瘍と転移について
  『ガンというもの(Ⅲ)』:転移が早い理由
  『ガンというもの(Ⅳ)』:ガン細胞は日々身体の中にできている
  『ガンというもの(Ⅴ)』:ガンで困ること
  『ガンというもの(Ⅵ)』:ガンの種類【組織型分類①】
  『ガンというもの(Ⅶ)』:ガンの種類【組織型分類②】
  『ガンというもの(Ⅷ)』:ガンの種類【部位別】
  『ガンというもの(Ⅸ)』:ガンマーカー
  『ガンというもの(Ⅹ)』:ガンの治療法 ~ 本編です。