こむら返り(Ⅵ)
前回は【筋肉の動き】を構造的に説明させてもらいました。今回はまとめとより身近な話で、【筋肉を動かす刺激】についてお話させてもらいますね。
その前に、これまでのまとめをザックリとしておきましょう。
●こむら返り(Ⅰ)では、なぜ『筋肉がつる』という現象が起こるのかという疑問を投げかけました。
●こむら返り(Ⅱ)では、(Ⅰ)の現象を簡潔に説明しました。
●こむら返り(Ⅲ)では、【筋肉の種類】を紹介しました。見た目や機能、役割の違いでいくつか呼び方がありましたね。
●こむら返り(Ⅳ)では、【筋肉のつくり】を解説しました。学問の用語が多かったパートですが、お読みいただいた方たちに感謝します。
●こむら返り(Ⅴ)では、【筋肉の動き】を構造的に解説しました。結構細かいところが複雑に動いていますでしょ?
●こむら返り(Ⅵ)では、【筋肉を動かす刺激】をこれから説明させてもらいます。
運動は筋肉の伸縮によって成り立つと言っても良いでしょう。筋肉が伸び縮みしなければ、立つ・座る・歩く・走るどころか、心臓そのものが動かなくなってしまいますから大事(おおごと)です。軽く汗を流せなくなってしまうどころの騒ぎではなく、冷や汗ものですね。
筋肉を動かすには、ATPと呼ばれるエネルギーはもちろん必要なのですが、脳からの刺激を伝え、その刺激を介するものが必要なのです。脳からの刺激は《活動電位》と呼ばれる電気刺激が運動神経を介して筋肉まで届けられます。筋肉に伝える最後の神経末端では、どんなことが行われていると思いますか?
正常な反応を示す(刺激を送る)ために、実は非常に重要なものがあります。それは、皆さん名前はよくご存知のはず。「カルシウム」です。正確には、それが水に溶けやすい形へと変化した「カルシウムイオン」。鉄とサビは違いますよね?サビは鉄と酸素が結びついたものですが、鉄と違って金属特有のピカピカ感(金属光沢)が無くなり、電気を通さなくなって(通電性を失う)しまいます。それと同様に、カルシウムイオンとカルシウムは全くの別物と思ってもらっても構いません。性質が全く異なります。
骨の主成分はカルシウムですが、カルシウムそのものではありません。そして、何のために全身に骨があるのかと言えば、全身でカルシウムイオンが必要だからなのです。血液を介して全身へと運ばれますが、血液中にカルシウムイオンが不足すれば、骨から溶け出させてまで、一定量(一定の濃度)を保とうとするのです。つまり、それだけ重要な役割を担っているのです。カルシウムイオンは!
カルシウムイオンの重要性を認識いただけたでしょうか?これまで解説してきた筋肉の収縮にも使われます。他の神経伝達にも使われます。もっと言えば、生を受けた瞬間(受精の瞬間)から関わっています。
滅茶苦茶重要だからこそ、全身に骨として貯蓄されているのです。でも、困ったことに、食事を工夫しないとなかなか吸収できません。油に馴染みやすいので、揚げ物をすると自分の身体に吸収できる量が減ってしまいます。美味しいですけどね、フライとか。牛乳も成分の約半分は乳脂肪。いくらカルシウム量が多く含まれていても…というのは以前も述べさせてもらいましたね。お菓子に含まれるリンもカルシウムと相性が良いので、自分の身体に吸収できるはずのものを横取りして行ってくれちゃいますよ~。お菓子の食べ過ぎには要注意ですね!!
では、一般的なカルシウム製剤をせっせと口にしていれば安心なのでしょうか?いや、だから、カルシウムとカルシウムイオンとは性質が違いますから!!カルシウム製剤やヨーグルトなどを大量に摂っても、身体にはあまり吸収されませんよ。
ほかのミネラルのこともありますので、次回、このシリーズの最後にオススメの対処法をお伝えしますね。もちろん、忘れてませんよ!『こむら返り』のことも。