疲れを科学する(Ⅶ)
この回では、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)に関して掘り下げてみようと思います。前回でも少し触れましたが、SODは活性酸素を除去してくれるものとして有名なものです。SOD様物質とも言われる抗酸化物質とは異なり、SODは酵素なので、タンパク質です。
何が違うのかというと、SODは使い捨てタイプではなく、構造が壊れたり活性が失われたりしない限り何度も活性酸素を除去してくれる掃除機みたいなものであるということです。一方で、抗酸化物質とは、活性酸素などと反応すると自分自身も変化してしまうので、使い捨てタイプ。
SODはヒトに関しては、現在3種類見つかっています。SOD1、SOD2、SOD3と呼ばれていますが、それぞれ存在している場所が違います。SOD1は細胞の中の細胞質と呼ばれる部分にいます。SOD2は細胞の中にある小さな器官のミトコンドリアの中、SOD3は細胞の外にいます。それぞれ、形や大きさが違うのですが、役割は活性酸素を打ち消すこと。因みに、SOD1とSOD3はCu(銅)とZn(亜鉛)が無いと正常に働いてくれませんし、SOD2はMn(マンガン)が無いと正常に働いてくれません。他にも微生物の中にはNi(ニッケル)を持つものやFe(鉄)を必要とするものやMn(マンガン)を必要とする別タイプのSODなども見つかっています。微生物である腸内細菌などに役立つかもしれませんね。
SODは比較的大きな物質なので、移動が苦手です。今いる部屋から別の部屋への移動(細胞膜を隔てて移動すること)は困難です。そのため、そこにいるSODに必要なミネラル(Cu、Zn、Mnなど)を供給する(届ける)ことが重要になってきます。もしくは、SODを含んでいる食品を摂取することでしょう。少なくとも腸内で大量に発生する活性酸素を軽減してくれる作用があるはずです。摂取したすべてのSODが胃酸で分解されるわけではないのですから。(SODの量が少ないものを摂取しても効果は期待できないでしょう。その点はご注意ください。)また、活性酸素は様々な場所で発生し、いたるところで悪影響(良い面では殺菌作用などがありますよ!でも、多くの病に関わるとされています。)を及ぼすことが知られていますので、なるべく発生した場所で直ぐに消去できる状況にしておくことが望ましいわけです。
再度申し上げますが、SODはタンパク質ですので、加熱処理したら変性して失活(活性を失う)してしまいます。肉を加熱すると見た目も色も性質も変わってしまいますよね。一度熱により変性してしまったタンパク質は元には戻りません。壊れた掃除機はただのゴミ。活性酸素の除去には全く役に立ちません。
また、最近は『○○酵素』と称する健康食品が数多く販売されていますが、その多くはただの【酵素分解物】であることが多いです。酵素そのものを摂取しているわけではありませんので、ご注意ください。あくまでも、自然界にある食物繊維を分解する酵素を用いて果物や野菜などを分解した《分解液》で、流通上の問題や食品衛生法の問題上、加熱殺菌処理されていますので生きた酵素(活性を失っていない酵素)を含むことはまず有り得ないでしょう。あったとしても、その商品の数は少ないです。商品名に騙されないようにご注意ください。先入観は捨てて、客観的に判断してください。材料名と形状、熱処理の有無で分かります。
今回はこの辺で締めくくります。次回は、具体的どうしていけば良いのかという点で触れていこうと思います。よろしくお願いします。