EBMという考え方 (Ⅱ)
前回、口に入れるものに関して注意をしているということをお伝えしました。皆さんはどの程度気にしているのでしょうか。少なくとも、「自分は健康に気を遣っている!」という人であれば、【どういうものが身体にとって害になるのか】とか、【何が身体のどういうことに効果をもたらしてくれるのか】などの事は、自分自身で簡単な説明ができるくらいの情報は持っているべきでしょう。《テレビで放送されているから》・《巷で流行っているから》・《知り合いに勧められたから》などの理由だけではなく、『自分にとって何故必要なのか』『どのようなメリット(改善効果)があるのか(期待できるのか)』ということを踏まえておくべきでしょう。
実のところ、テレビ番組中の話やCMは、お金を出せば特集を組んでくれたりします。「告知する」「伝える」ことを目的としているので、ほんの一面だけを強調して放送されたりもします。間違った情報であっても放送されることがあります。最近、漢方薬ブームみたいになってきておりますが、とある番組でとある医師が「漢方薬というのは、3種類以上の生薬を配合して作られているものです。」と言っていました。しかし、2種類の生薬から作られているものだってあります。民間薬まで含めれば、1種類だけを煎じて作っているものさえあります。そもそも漢方薬とは、本来は一人一人異なる『証』を持っているので、その『証』を見極めて、その人に合ったものを処方した生薬由来の配合薬を指すものです。「生薬から作られているものが漢方薬」という訳ではないと思うのです。
ところで、表題の【EBM】って何だ?ということなのですが、【EBM】とは【Evidence-Based Medicine】の省略です。『根拠に基づいた医療』という意味で、治療効果や副作用、予後の臨床結果に基づき行う医療のことです。要するに、幅広く情報を求めて、現時点で最も信頼できる情報を踏まえながら、目の前の患者さんにとって最善の治療を行うということです。
話は少し飛びますが、実のところ、医薬品や食品に関して、様々な表現の規制がかけられていることはご存知でしょうか?医薬品に関しては、薬事法で規定されており、虚偽(当然ダメです)・誇大な広告や表示に関して取り締まりの対象とされています。また、効能・効果を明示できるのは、医薬品と特定保健用食品(トクホ)だけです。食品に関しては、ギリギリラインのものが多く、薬事法に触れないように表示をしているもの(アウトのものも意外と多くあります)が多々あります。具体的に「△△(商品名)は、○○(効能)に効く」と書いた食品であれば、確実に薬事法に触れます。また、食品衛生法なども存在するので、表示のルール等は厳しく限定されています。まあ、企業は商品の魅力をアピールしたいので、その隙間を通してくるわけですが...。
何にせよ、具体的な根拠を持って、魅力をアピールするべきだと私は考えます。何のデータもない食品は、効能とか効果をアピールすべきではないとも思います。よく見聞きするのは、使用者の感想を映像やレターで報じるものですが、その商品のアピールしたい根拠となるデータを持っていない企業が残念ながら多すぎる。曖昧な感想だけの製品は気を付けて購入しなければなりません。
そもそも食品は、単一成分だけで出来ているわけでは無いですよね。いくら良い成分が他の物より少しばかり多く含まれているといっても、普段から摂っているものに関しては、積極的に身体に取り込まなくても良い訳です。その食品は、良いとアピールされているもの以外の含有成分は、身体に良いことをしてくれるものだけで構成されているでしょうか?味覚や見た目に差し障りがないように、味付けや色付けのために加えたれた化合物は?一日の推奨量や摂取許容量を超えてしまうような甘味成分や炭水化物は?一日の食事でしっかりと賄えているもの(十分量摂れているもの)に関して、更に追加して摂る必要があるのでしょうか?
具体的に、畑になっている夏野菜、トマトで考えてみましょう。一時期、大ブームがあって、スーパーの店頭から一瞬で消えてしまう野菜として注目が集まりましたね。トマトには、リコピンという有効成分が含まれています。脂肪肝や血中中性脂肪の改善に適しているということで、ダイエット食品として脚光を浴びたからです。ビタミンCも当然、含まれています。しかしながら、夏野菜であるトマトは、カラダを冷やしてしまう効果もあるわけで、低体温の人や冷え症の人などにはお薦めできません。そもそも、冬場に本来は実るはずのないトマトを人為的に実らせ、食卓の上に登場させることが不自然なのです。冬場にカラダを冷やす食材をわざわざ口にする必要性はないわけで、そのようなことはなるべく避けて欲しいものです。天然物でさえ弊害を持ち合わせるのですから、加工食品ともなれば、尚更ですね。畑にリコピンが生えているわけではありません。効果を期待すること自体に否定はしませんが、トータルバランスを鑑みることが大事なのです。全体的なバランスを見て、自分に適しているのかの判断を盲信することなく自身でしていかなければなりません。“木を見て森を見ず”ではありませんが、一面だけを見て全体を見ぬふりなどをせず、『何が、どのように、なぜ効果を示すのか』・『どれだけの量を摂取すると自分に効果が現れるのか』・『他に何らかの作用が現れないのか』などの視点を持って本当に自分に必要なものを選んでください。
2015年4月(施行は3月)から、健康食品(政府的には、「いわゆる健康食品」)に関しての表示方法が一部変わるとのことです。学術データをしっかりと持っているものであれば、食品であってもその効果を表示しても良いことになるそうです。そうなれば、適当なことを言っていた健康食品はある程度淘汰されるでしょう。効果がイマイチなものも、やがて廃れていくのではないでしょうか。皆さんが今後気をつけなければいけないこととしては、適当なデータで効能・効果を表示しているものや、嘘のデータによる表示などでしょう。その様な物を薬局に並べないように、管理者も気をつけなければなりません。