ブラックボックスと言われる場所(Ⅶ)
一般的に、健康な人であれば、腸内細菌は“善玉菌”が20%、“悪玉菌”が10%の割合で存在していると言われています。残りの70%は「日和見菌」というものに分類されて、腸内環境によって良い働きをする時もあり、悪い働きをする時もあるという菌種です。というか、実態がよく判っていないものがたくさんこの中に含まれていることも事実です。ですが、「日和見菌」は“善玉菌”が優勢になると良い働きをするし、“悪玉菌”が優勢になると悪さをするようです。そうは言っても、善玉菌が勧善懲悪、悪玉菌が完全悪というわけではなく、相互作用により、時と場合によって悪さをするものもあるし、良いことをしてくれるものもあるようです。
“善玉菌”の代表例はやはり、乳酸菌でしょう。細菌の代謝により『乳酸』を自ら作り出す細菌です。自分たちの身を守るための防衛手段の一つと考えられますが、人体にとって有益なため、“善玉菌”と呼ばれます。実は、ビフィズス菌は乳酸菌の一つです。
・ラクトバシラス属(Lactobacillus) ・ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)
・エンテロコッカス属 (Enterococcus) ・ラクトコッカス属 (Lactococcus)
・ペディオコッカス属(Pediococcus) ・リューコノストック属 (Leuconostoc)
以上の6属が代表例ですね。ビタミンの合成や消化吸収の補助、感染防御、免疫刺激などの作用を担い、健康維持や老化防止に役立っていると考えられています。
ヨーグルトに使われているものは、ラクトバシラス属(Lactobacillus)が多いです。L.~とか名前が付けられていますね。ガセリ菌も、ラクトバシラス・ガセリ、ブルガリクス菌もラクトバシラス・ブルガリクス、カゼイシロタ株もラクトバシラス・カゼイ・シロタ、LGGもラクトバシラス・ラムノーサス。ブルガリクス菌と混合すると乳酸をより多く生産することで知られるサーモフィラス菌はストレプトコッカス・サーモフィラス、花粉症症状を緩和すると報告があるBB536菌はビフィドバクテリウム・ロンガム、胃酸に強い高生存菌ということで宣伝しているBE80菌は、ビフィドバクテリウム・アニマーリス亜種ラクティス。
“悪玉菌”の代表例は、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、有毒株の大腸菌などです。腸内腐敗、細菌毒素の産生、発ガン物質の産生、ガス発生などを行い、健康阻害、老化促進、病気発症の引き金に成り得るのです。実は、黄色ブドウ球菌は普通に皮膚などにもいます。
日和見菌の代表例は、バクテロイデス、無毒株の大腸菌、連鎖球菌などです。といっても、院内感染などで大問題となるA群連鎖球菌やMRSA(薬剤〈メチシリン〉耐性黄色ブドウ球菌/悪玉菌)などは病原性を持っていますし、無毒株の大腸菌も毒素を作り出すプラスミドを細胞内に取り込めば病原性を持つものに変異します。身体の免疫力が下がれば、悪さをしだすのが日和見菌だとお考え下さい。
日和見菌が70%。有用株を積極的に取り入れても、定着するのは困難を極めるでしょう。では、一体いつ腸内細菌叢/腸内フローラは形作られるのでしょうか?