疲れを科学する(Ⅲ)
前回、「乳酸は疲労物質ではない!」ということを紹介しました。何故、以前は乳酸がまるで悪者の様に注目されてしまっていたのでしょうか?
基本的に筋肉が動く(運動する)と、エネルギー源としてブドウ糖が使われます。そのブドウ糖が代謝されてピルビン酸に変化して、そして乳酸に変化していくのですが、運動中に代謝された物質の中で比較的長時間体内に残っていたのが乳酸だったのです。
エネルギー源として筋肉を動かすと… 「ブドウ糖 → ピルビン酸 → 乳酸」 と変化する!
(変化するもののホンの一部です。運動のやり過ぎには注意してください。)
運動後、筋肉や血液中に溜まり出した(検査すると運動前にはほとんど無かったのに、運動後にはたくさん検出された物質)ため、疲労物質だと考えられた訳です。それが、長時間の運動や激しい運動であればある程、乳酸の数値は高くなったのです。
だから、一見すると乳酸は「使い切ったものの搾りカスなのだろう。ゴミなら早く体外へ排出させた方が良いのじゃないか?」という考え方が生まれたわけです。
しかし、実際のところは、乳酸自体が直接エネルギー源として働くわけではありませんが、心筋や遅筋(有酸素運動で動く疲れにくい筋肉)では「乳酸 → ピルビン酸」という反応が起こるので、重要な物質なのです。乳酸が溜まってしまうのは、無酸素状態で早く動く速筋が「ピルビン酸 → 乳酸」という方向で反応が進むためであり、対応する筋肉の種類が違うのです。
速筋は、素早く動くためには無酸素状態でも瞬時にエネルギー源を分解して活動力に変えなければいけないので、運動時にいち早く反応する筋肉です。そのため、「速筋が活動する → ブドウ糖(筋肉中のグリコーゲンが分解されブドウ糖になる)が代謝され、乳酸ができる → 血中乳酸濃度が上がる → 心筋・遅筋・肝臓などの代謝量(活動量)が上がる → 乳酸を代謝してピルビン酸に変化させる」という図式になるわけです。
少し専門的に偏ってきてしまったので、今回はこの辺で切り上げますね。次回はもう少しだけ、「乳酸」と「運動」の関係を掘り下げていきます。近いうちに【疲労の原因】を明らかにして、『疲労の対策』も披露致しますので、お付き合いください。