ブラックボックスと言われる場所(Ⅴ)
腸(特に小腸)は、栄養の消化吸収だけではなく“腸管免疫系”にも関わっています。加齢に伴って胸腺や脾臓などの大きな免疫器官が萎縮し、免疫機能が徐々に低下していくのは誰もが通る道、やむを得ないことです。そのため、加齢に伴ってより重要になってくる免疫器官が腸の“腸管免疫系”となるわけです。
では、 “腸管免疫系”とは一体どのようなものなのでしょうか?ブラックボックスと言われる場所(Ⅲ)で少し述べましたが、“腸管免疫系”の機構はそれ以外にも『腸内細菌』の環境と深い関わりがあるとされています。
皆さんは、ご自身の腸内にどれくらいの細菌が住み着いていると思いますか?因みに、細菌は肉眼では見ることができないくらい小さいものです。
実は、まだよく分かってはいないのです。しかし、メタゲノム解析という方法で遺伝子群を調べたところ、ヒトの腸内細菌叢(腸内でコロニーと呼ばれる村みたいなグループを形成しており、その細菌の分布状態や集まりのことを呼ぶ 別名:腸内フローラ)を構成する細菌の種類は1,000種類はいると見積もられています。そして、細菌の数は…何と…1,000兆個。数が大きすぎて想像できませんね。ヒトの体を構成する細胞の数が約60兆個でできていると言われているので、細菌はざっと16倍以上の生息数。
この腸内細菌叢(腸内フローラ)は、ガンとの関連やアレルギーとの関連、生活習慣病との関連など様々な疾病と関わりがあるのではないかと考えられており、現在研究が進められています。その中で、現在までに判明していることは、離乳前後で腸内細菌叢(腸内フローラ)が大きく変化することおよび離乳後もずっと居続ける腸内細菌種がいること、クローン病や潰瘍性大腸炎では腸内細菌叢(腸内フローラ)が異なっていることなどがあります。
また、腸内細菌叢(腸内フローラ)は親子間で必ずしも似ているとは限らず、ひとりひとりそれぞれの腸内細菌叢(腸内フローラ)が存在するようなので、腸内環境は家族性ではなく、個人個人で異なると考えて良いようです。…複雑ですね。まあ兎に角、『腸内細菌』と『腸管免疫系』には密接な関係があると言われており、全身の健康バランスに影響を及ぼすことが知られています。一例として、乳酸菌は腸内の免疫バランスを整えて花粉症対策に役立つものもあるとか。とは言え、乳酸菌ってすごくたくさんの種類があるのですが。次回は、腸内細菌叢(腸内フローラ)を整えるお薦めの方法論について触れておきます。