ガンは役立たず?(Ⅳ)
ガン遺伝子を前回説明させていただきましたが、少し難しかったですね。身体の中には様々な仕組みがあるというわけです。そのバランスが著しく乱れてしまうと様々な病気が発症してしまう訳です。バランスを乱してしまうというもので忘れて欲しくないものがあります。以前に『内分泌攪乱物質(環境ホルモン)』という言葉が世間を騒がせました。
ホルモンとは、「内分泌系に影響を及ぼすことにより、生体に障害や有害な影響を引き起こす外因性の化学物質」と定義されているので、ホルモンかどうかは微妙な立場ですが、ホルモン様物質であることは間違いなく、身体の調節機能を果たすホルモンと同等(場合によっては同等以上)の働きをします。助けてくれる場合もありますが、作用が強すぎれば当然弊害も出てきますので、代謝が攪乱されてしまう。悪影響の代表例は、アレルギーや乳ガン、不妊、発達障害などです。
一躍有名になったのは、『沈黙の春』や『奪われし未来』という本が出版されたためです。『沈黙の春』は、農薬DDTについて述べられたものとして有名です。
このままだと、ガンから逸れて行ってしまいそうなので、口惜しいですがここら辺で遺伝子の話へと戻ります。
ガン遺伝子の話ばかりしてきたので、ちょっと雰囲気を変えるために長寿遺伝子の話をしたいと思います。ガンは役立たず?(Ⅱ)でテロメアの話をしました。テロメアを制御できれば長生きもしくは若返りが出来るかもしれません。それとは別に、あなたの身体(細胞)の中には、長寿遺伝子というものがあります。
では、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)というのは、いったい何をしてくれているのでしょうか?
抗老化遺伝子とも呼ばれる長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)は、活性化するとその生物の寿命が延びると言われています。活性化されることによって作られるタンパク質がサーチュイン。このサーチュインが遺伝子の本体であるDNAが巻きついているもの(ヒストン)とその結合に作用(ヒストン脱アセチル化)して、いろいろ調節してくれる結果、寿命を延ばしてくれるようです。本当にヒトの寿命に効果があるかはまだ詳しくは分かっていないようですが、酵母や線虫などでは報告があるようです。
またまた余談ですが、この長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)は、マウスの実験で記憶の調節に関係している可能性が示唆され、アルツハイマー病や神経変性疾患の治療の他、動脈硬化、心不全、慢性閉塞性の肺疾患や炎症性の腸疾患、2型糖尿病、万病の源?の肥満、筋肉減少症などに効果があるとされています。