ガンは役立たず?(Ⅲ)
遺伝子レベルで様々なことがわかるようになってきました。SNP(一塩基多型)と言われる多様性を調べることで、アルコール(お酒)に対する強さを知ることができたり(ALDH2)、薬に対する影響(薬剤代謝)を知ることができたり(CYP)もします。研究がより進めば、高度な技術が確立され、「テーラーメイド医療(オーダーメイド医療・個別化医療)」として副作用が少ない、身体に負担がかかりにくい医療が樹立されていくことでしょう。まあ、“本来の漢方薬”は、患者さんの悩みが何に起因(どこで、なにが、どれになっているのか)していて、どうすればよいのかを考えて、自然界にあるものを調合し、適切に処方するものなので、個別化医療の源ともいえるのではないでしょうか。
では、遺伝子とガンとの繋がりはどのようなことがあるのでしょうか?実は、身体の、というか、遺伝子の中に「ガン原遺伝子」と呼ばれる部位があり、何かの影響で変異が起こると「ガン遺伝子」へと変化してしまいます。ウィルスにより身体の外部から持ち込まれる場合もありますが、生きていくためには自分の細胞を増殖・修復しなければならないので、増やす仕組みがなければなりません。大雑把に言うと、それが「ガン原遺伝子」なのです。
何らかの影響というのは、自然に起こる突然変異であったり、紫外線や放射線の影響であったり、化学物質であったり、ウィルスであったりと原因は様々ありますが、遺伝子に影響を与えるとガンが発生することがあります。無くてはならない「ガン原遺伝子」ですが、成っては困る「ガン遺伝子」ということですね。自身の修復機能を高めておきたいものです。
もちろん、「ガン原遺伝子」を放置したままにしておくことはありません。のべつ幕なしに増殖させないようにするために、「ガン抑制遺伝子」というものがあります。有名なものがp53やRb、BRCA1といったものです。それらの設計図から作られるもの(タンパク質)は、ガンを抑制してくれることで有名です。p53タンパク質に異常が起こると、大腸ガンや乳ガンなどに罹りやすくなることが知られており、Rbタンパク質の変異が起こると、網膜芽細胞腫や骨肉腫などに罹りやすくなり、BRCA1タンパク質の変異では、家族性の乳ガンや子宮ガンに罹りやすくなるそうです。