病因 《 素因 2 》 : 脾虚体質
脾の生理作用
脾は、胃・小腸・大腸に命令を出し飲食物の消化吸収排泄作用をさせ、吸収した精微物質(気や血や津液になる前の物質)を腎・肝・肺・心の各臓に運化しています。気血を作り出す元締めであり、脾と胃腸が丈夫な方はよく食べ気血も十分あります。また血が血脈中を正常にめぐり脈外に漏れ出ない様にする統血作用も行っています。
《関与部位》 (参照;病因 《 素因 1 》 : 肝虚体質)
脾は、肌肉・口・唇に関与。
また鍼灸の経絡では、
●脾経は、足の母指から内股を上り脾・胃・心・咽喉・舌に関与
●胃経は、目の下から始まり、上歯・唇・額・咽喉・乳・脾・胃・足の前面外側・三里を通り足人指し指に関与
●大腸経は、手の人指し指から肺・大腸・下歯・鼻翼外側に関与
●小腸経は、手の小指から咽喉・心・胃・小腸・目・耳に関与
していますので、これらに症状が出た場合は脾が関係している事も考えられます。
● 脾虚の体質傾向の方は
食欲異常(過食・小食・食不振)や嘔吐、胃もたれ、胃痛、胸やけ、げっぷ等の胃の症状や下痢、便秘、腹痛、腹鳴、腹張、腹水など腸の症状がいつも気になる。
肌肉(筋肉などの肉質部分)では、肌肉自体が痩せ、手足の筋肉に力なく、手足が疲れやすい。
口・唇では、口渇・口の周りに吹出物、口内炎、唇の乾燥や荒れなどの病変があらわれます。
脾経・胃経・小腸経・大腸経の走行部の痛みや熱感や冷感 、舌が動かしにくい、額が黒い、寝つきが悪い、歯痛、鼻つまり、咽喉腫痛、声が出なくなる、よくあくびをする、手足がほとる、寝汗・夕方になると熱っぽくなる、膝関節腫痛、小便が気持ちよく出ない、動悸、健忘、不眠、難聴、月経不順、鼻血、吐血、痔出血、血尿など各種出血・イボや湿疹ができやすい。
●体質的に脾虚で胃腸の消化吸収排泄作用が充実し過ぎているタイプは
胃腸の陽気が盛んで、気血が多く生産され、胃に熱を持ちやすく、食べ過ぎ・食事時間が待てない、肥満型でがっちり太い、血行がよく赤ら顔、暑がり・冬でも薄着、冷たい飲食を好む、温かい食事をして冬でも汗かく、顎や口が大きく唇も厚く赤い、額も広い、額からはげやすい、陽気で明るくよくしゃべる、宴会など大好き、鼻血、足丈夫でよく歩ける、どこでも眠れる、子供の場合土や石でも口に入れるなどが典型的な特徴としてよく見受けられるものです。
体調が崩れると
口がよく渇き冷たい物を飲む、口内炎・舌炎・口角炎などの口腔関連の炎症が発症しやすい、胃が悪い時でも疲れた時でも食べれば普段通り食べられる、下痢すると腹中の熱抜けスッキリ、便秘すると熱がこもり張りが強くなり苦痛で直ぐにでも出したい、大いびきで寝言多い・夜中に目が覚める・のぼせ・出血(吐血・鼻血・脳出血など)などが症状として出てきます。もう少し症状が顕著に現れるようになると、躁状態になり突然裸になって走り回る・高い所に登って歌う・お酒を飲むと裸になるといった行動に出ることがあります。
漢方薬
胃腸の熱をさばく『黄連』や『大黄』の入ったものが必要になります。
●体質的に脾虚で胃腸の消化吸収排泄作用が弱っているタイプは
胃腸の陽気が少なく気血の生産が少ない、胃腸が冷えやすく食が細い、陽気が少し多い時は調子よく食欲も出るが少し余分に食べると消化できなく胃に不快感を訴える、生物(生魚や生野菜果物)でも胃が冷える感じがする、血色が悪く唇も白っぽい、口顎小さく唇も薄い、痩せていて肌肉がブヨブヨでやわらかい、胃の中で水がチャボチャボする、温かい飲食を好む、疲れやすく筋肉に力がない、体毛も少ない、無口で物思いにふける、記憶力がよい。
体調が崩れると
手足に力が入らない、だるい、常に少食で調子悪いとまったく食べられない、一食抜いても平気、思い悩むと食欲さらになくなり食べても入らない、思い悩み過ぎがひどいとあちこちから出血する、軟便気味で下痢するとだるくお腹がさらに冷えて不快になる、便秘しても張りを感じず便秘薬で腹痛がひどく下痢が止まらなくなる、口中の唾液多い、昼間も眠く特に食後眠くなる、記憶力の低下、考えがまとまらず考え込む、人に会う事を嫌う、何も言わない、何もしない、うつ病。
漢方薬
脾の精気を補う『人参』や『大棗』、胃腸の陽気を補う『生姜』や『乾姜』、水(湿)を巡らす『茯苓』や『白朮』の入ったものが必要になります。
飲食物で内臓を冷やすことや暴飲暴食は避け、毎日出来るだけ3食を決まった時間に決まった量を摂り、夜食や間食はやめ、規則正しい生活をし、クヨクヨ悩やみ考えないようにしましょう。気分転換に音楽を聴いたり軽い運動散歩でも。胃腸に熱の多い時は、激しい運動や大声で歌を歌ったりして熱を発散しましょう。