病因 《 不内外因 》 : 妊娠・出産
最近は、スタイルを気にして食事制限をし細身を維持したり、ダイエットで急激に痩せたり、生野菜サラダや果物のみの食事で済ませる、冬でも夏の物を食して体を冷やし低体温になっている女性が多く見受けられます。実際に、低体温に関わる悩みで相談に来局される方も少なくはありません。特に多いのが、冷え性でのお悩みですね。このような方は血を充分に蔵することができず、血が不足しています。
また、最近はテレビ(地デジで映像が美しいが明る過ぎる画面)やパソコン・iPad・携帯電話(特にスマートフォン)など、目を非常に酷使する環境が当たり前の生活になってしまいました。漢方では、目は血がないと働けず、目を使うと血が消耗され、不足していくと考えています。
(参照;病因 《 不内外因 》 肉体的過労)
漢方では、妊娠するために必要な女性の腎精である卵子は、元は血であり、血の陽気と腎の陽気により活動力が生じ若々しい卵子が正常に排卵でき、また受精して、血が充分あるフカフカの子宮内膜に着床し、母体から正常な精気をもらい発育し、心音が聞こえるようになり、生理で毎月体外へ出ていってしまっていた血が妊娠により子の栄養へと巡るようになり、胎児が母体(子宮)の中で成長していくのです。
胎児へ優先的に血が補給されるため、しばしば母体に血が不足することがあります。血の不足状態がひどい場合、胃の筋肉に充分な血が巡らないため、胃の活動量は低下し、冷え、胃に水が停滞し、つわりを生じます。また不安や心配も多く、精神的過労も重なります。
しかし、お腹の中で動く胎児を母体で感じ、会話のできる楽しさは安らぎますよね。
十月十日(とつきとうか)、母体の血で胎児に栄養を補給し、出産時の陣痛という痛みをこらえる為、また胎児を生み落とす為に、全身の筋肉や子宮の筋肉に精一杯力を入れ、力み、筋肉でかなりの量の血を消耗し、場合によっては出血も伴い、血が最も不足する事になります。
産後の母乳も血の一部であり、母体は血が不足すると、血が有余して育つ髪の毛が育たなくなり、抜け毛が目立ち、沢山の子を出産した母は、腎の精が少なくなり、歯も弱く・もろく・少なくなってしまいます。また、臀部から全陰部にある骨盤底筋が出産の影響で筋力が低下し、尿漏れ・腹部の冷感・性交痛・便秘・また歩く時の姿勢にも影響を与えスタイルも悪くなります。
よく妊娠・出産は 『 病気ではない 』 という事を言われる方が見えます。健康保険が適用されないからでしょうか。身体の防衛機構から考えると、大切な授かった子とはいえ、自分とは半分異なる遺伝子が混じっていることになるので、防衛反応を示してしまうのは当然のことです。そして漢方では、妊娠・出産は「肉体的精神的過労」であり、病気を発生する原因と考え、治療を目的に妊娠中でも産後授乳中でも不足しているものを補い治すことを目的とした漢方薬があります。
産後の養生は大切です。産後は、だれでもどんな体質の人でも休むことが大切です。特に目を使う事や根気良くやる事は避けましょう。頭を使う事も少なくしましょう。血を十分に補給し、ストレッチで骨盤底筋の回復をはかり、妊娠前以上の健康な状態に戻しましょう。